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人事管理 派遣法 2022年07月28日

派遣社員の社会保険加入時の条件、注意点は?

派遣社員の社会保険加入時の条件、注意点は?

派遣社員は、実際には派遣先で仕事に従事することになるものの、派遣会社との関係で雇用関係がある「労働者」です。

 

そのため、派遣社員も、条件を満たせば派遣社員ではない他の労働者と同じように派遣会社の元で社会保険に加入してもらう必要があります。

 

そこで、本稿では、派遣社員の社会保険加入について解説します。

そもそも「社会保険」って?目的やメリット・デメリットは?

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(1) 労働保険・社会保険制度の目的

まず、労働保険や社会保険とはどういう制度かという点について説明します。

 

人は誰しもが仕事中やプライベートで病気やケガをすることがあります。また、会社を辞めることとなったり、歳を重ねて介護が必要になったりすることもあります。

 

我が国では、そうした誰にでも起こり得るリスクについて、国民全体で予め保険料を支払い、ケガや病気、失業等が起きたときに必要な金銭的給付を受けることができるようにしています。

 

それが「労働保険」と「社会保険」であり、両者を併せて「公的保険」と呼ばれます。この「公的保険」を広く「社会保険」と呼ぶこともあります。この広い意味での「社会保険」の定義に従い、本稿では、労働保険、(狭義の)社会保険の両方について説明します。

 

こうした公的保険制度を設けることで、上記のような誰にでも起こり得るリスクを国民全体でカバーし、広いセーフティネットを用意することが公的保険制度の目的です。

(2) 労働保険、社会保険加入のメリット

社会保険加入のメリットは様々ありますが、主なものとして、以下の点が挙げられます。

 

・老齢年金、障害年金、遺族年金が充実する。

・保険料負担は事業所と折半になる(国民健康保険の場合は全額自己負担)。

・傷病手当、出産手当金、を受け取ることができる。

・障害年金、遺族年金等の給付が充実している。

・失業時に失業保険の給付を受けることができる。

(3)労働保険、社会保険加入のデメリット

・被扶養者から外れた場合、保険料の負担が発生し、手取金額が減少する。

 

労働保険、社会保険の加入には上記のようなメリット、デメリットがありますが、これらの制度は事業所・労働者に対し加入が義務付けられているため、派遣会社がメリット、デメリットを比較して任意に加入してもらうかを決めることができるわけではありません。

社会保険ってどのような種類がある?

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(1)各保険制度の概要

上記のとおり、公的保険には、大きく「労働保険」と「社会保険」とがあり、労働保険には、「労働者災害補償保険」(以下「労災保険」といいます。)と「雇用保険」が、社会保険には、「健康保険」、「厚生年金保険」そして「介護保険」があります。

 

それぞれの制度の概要は以下のように整理できます。

 

a)労働保険

 

・労働者災害補償保険(以下「労災保険」といいます)。

…仕事中や通勤中によるケガや病気のリスクに対する保険。療養補償給付、休業補償給付などがなされる。

 

・雇用保険

…失業したときのリスクに対する保険。いわゆる失業手当が主。

 

b)社会保険

・健康保険

…仕事以外での病気やケガのに対する保険。療養費や傷病手当金など。出産育児一時金や出産手当も含まれる。

 

・厚生年金保険

…高齢になり働けなくなった場合や、障害が残ったり死亡した場合の保険。老齢基礎年金や障害給付、遺族給付など。

 

・介護保険

…介護が必要になった時の保険

 

(2)各保険制度の被保険者の要件

上記でも述べましたが、公的保険制度は、要件を満たす事業所、労働者の全てに強制的に適用されます。

 

まず、適用事業所については、個人事業主で、一定の場合には、強制適用の対象とならない事業所もありますが、法人の場合には、いずれも強制適用となります。そのため、法人である派遣会社の場合には、全て適用事業所になりますので、自らが適用事業所か否かは問題にはなりません。

 

次に、各保険制度の被保険者となる要件は、制度ごとに異なっています。以下、それぞれの被保険者の要件について見てみましょう。

 

a)労働保険

・労災保険

労災保険については、いわゆる正社員はもちろん、パート、アルバイト等の短時間労働者についても全て被保険者となります。

 

・雇用保険

雇用保険の被保険者は、以下の方がその要件を満たすのが基本的な考え方です。

 

・1週間の所定労働時間が20時間以上

・31日以上雇用される見込みがある

 

したがって、いわゆる正社員は常に被保険者となります。他方で、パート、アルバイト等であっても、上記の要件に該当するのであれば被保険者となります。

 

他方で、日雇いや季節労働者等の常用的に雇用されるのでない労働者については、次のような場合に被保険者資格を有します。

 

区分 必要な契約期間
日々雇い入れられる者 1か月超(1か月以内の契約で、満了後も引き続き雇用された場合も含む)
臨時に使用される者 2か月超(2か月以内の契約で、満了後も引き続き雇用された場合も含む)
季節的業務に使用される者 4か月超(この場合、結果的に4か月を超えても被保険者とならない)
臨時的事業に使用される者 6か月超(この場合、結果的に6か月を超えても被保険者とならない)

派遣社員との関係では、上記の「臨時に使用される者」として、契約期間が2か月を超えるか、が問題となることが多いでしょう。

 

b)社会保険

 

健康保険、厚生年金保険、介護保険からなる社会保険は、それぞれ給付の目的などは違うものの、適用関係については重なることが多いです。

 

まず、いわゆる正社員については、全て被保険者となります。これは法人の役員や代表者といった「雇用契約」にない人も同じです。

 

他方で、パートやアルバイトなどについては、以下のように考えられています。

 

パートタイマー等労働時間、労働者

 

パートタイマー等については、週の所定労働時間、1か月の所定労働日数の“両方”が、正社員と比べて概ね4分の3以上である場合には、被保険者となります。

 

さらに、上記4分の3の基準に満たない場合でも、以下の要件を満たす場合には、被保険者となります。

 

・週の所定労働時間が20時間以上
・勤務期間が1年以上見込まれること

 

※社会保険適用拡大により、令和4年10月1日から、「2か月を超える雇用の見込みがあること」に改正されます。

 

・月額賃金が8.8万円以上
・学生以外
・従業員501人以上の企業に勤務(500人以下の場合でも、労使合意があれば可能)

 

※社会保険適用拡大により、令和4年10月1日以降、101人以上に。その後も段階的に引下げ。

 

雇用契約の期間が短期間である労働者

 

日雇い労働者や季節労働者等の常用でない労働者の場合は、雇用保険の場合と同じです。

 

その他年齢による加入条件

 

なお、健康保険は74歳まで、厚生年金保険は69歳まで加入することができます。また、介護保険は、65歳以上の人(第1号被保険者)と40歳以上64歳未満の人(第2号被保険者)が被保険者となります。

派遣社員の加入条件は

mits / PIXTA(ピクスタ)

 

さて、派遣社員は、実際には派遣先で仕事に従事するものの、雇用関係は派遣会社との間でのみ成立しています。

 

したがって、考え方としては、“派遣会社との関係”で上記の加入条件を満たすか否かによってきます。

 

まず、労災保険については、派遣社員も含めて全ての人が被保険者となり、介護保険については、40歳以上になると自動的に加入することとなります。

 

他方で、雇用保険、健康保険、厚生年金保険については、特定の要件を満たした場合でなければ加入できません。

 

労働保険、社会保険が適用されるかどうかは、上記のとおり少々複雑ですが、判断の視点としては、(1)働く時間、(2)働く期間、(3)収入の3つの観点について、まず以下の点を確認してみるとよいでしょう。

 

例えば、派遣会社との雇用契約の期間が2か月を超える場合には、派遣社員にも社会保険の適用がなされます。

 

また、労働時間の観点からは、週の所定労働時間と月の所定労働日数の“双方”が、正社員の4分の3以上である必要があるので、例えば、正社員が週40時間、月20日勤務である場合、週の所定労働時間が30時間、月の所定労働日数が16日であれば、社会保険に加入しなければなりません。

 

しかし、週の所定労働時間が25時間の場合には、正社員の4分の3以上である30時間以上という条件を満たさないため、たとえ月の所定労働日数が20日であったとしても、社会保険に加入しないことになります。

派遣社員を雇用する場合に社会保険について注意すること

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(1) 派遣先に対する労働保険・社会保険加入状況の通知義務

これまで述べたとおり、派遣社員であっても、要件さえ満たせば、労働保険・社会保険に加入させなければなりません。

 

また、派遣会社は、派遣社員を派遣しようとするときは、当該派遣社員の雇用保険、社会保険の加入の有無を派遣先に通知しなければならず、加入していない場合にはその理由も通知しなければなりません(派遣法35条第1項第5号、派遣法施行規則第27条の2)。

(2) 派遣社員にも未加入理由を通知する必要がある

また、派遣会社は、労働保険・社会保険に加入していない派遣社員に対して、その具体的理由を通知しなければならないこととされています(派遣法第34条第1項第2号、派遣法施行規則第26条の2)。

 

したがって、派遣先だけでなく派遣社員に対しても、未加入の理由を通知しなければなりません。

 

そのため労働保険・社会保険への加入の有無は、派遣社員の人材確保の観点からも重要といえるでしょう。

(3) 社会保険の適用拡大に注意

上記解説の中でも言及していますが、今後、社会保険の適用が拡大されていきます。

 

詳細は、以下の厚労省HPをご参照ください。

 

【厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト】

https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/guidebook/

 

まとめ

これまで述べてきたように、派遣社員は、実際には派遣先で仕事に従事するわけですが、派遣会社で雇用される労働者で、他の労働者と同じように、要件を満たす場合には労働保険・社会保険に加入してもらわなければなりません。

 

また、これらの加入状況については、派遣先だけでなく派遣社員に対して通知することが義務付けられており、労働保険・社会保険に適切に加入しているか否かは、派遣社員の人材獲得に大きな影響を及ぼします。

 

したがって、派遣会社においても、雇用する派遣社員の労働保険・社会保険の適用の要否をしっかりと確認し、適切に加入してもらう必要があります。

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この記事の著者

堀田 陽平

〔石川県出身の弁護士〕 2020年9月まで、経産省産業人材政策室で、兼業・副業、テレワーク等の柔軟な働き方の推進、フリーランス活躍、HRテクノロジーの普及、日本型雇用慣行の変革(人材版伊藤レポート)等の働き方に関する政策立案に従事。 働き方改革が先行しているのは大企業です。しかし、働き方改革が想定する人口減少等の社会構造の変化の影響を真っ先に受けるのは中小企業であり、中小企業こそ働き方改革を実現させていく必要があります。「働き方改革はどうすればいいのか︖」という疑問に対するアドバイスや、主に企業側に対して労務、人事トラブルへのアドバイスを行っています。 【情報発信等】 日経COMEMOキーオピニオンリーダとして働き方に関する知見を発信。著書「Q&A 企業における多様な働き方と人事の法務」(新日本法規出版)

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