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派遣業界情報 2023年10月25日
人材派遣の受け入れで役立つキャリアアップ助成金とは?メリットやコースなどを解説
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人材派遣を利用する際に助成金を受給できるのはご存知ですか?派遣社員を受け入れて正社員に転換した場合、あるいは待遇を整備したうえで派遣社員を受け入れる場合、「キャリアアップ助成金」の活用が可能です。
この記事ではキャリアアップ助成金の制度の内容やメリットについてご紹介します。
目次
派遣社員を受け入れる際に使えるキャリアアップ助成金とは?
キャリアアップ助成金とは厚生労働省が所管している助成金制度のこと。
冒頭のとおり、
- 非正規社員(有期雇用労働者や短時間労働者、派遣労働者などいわゆる非正規雇用労働者)の正社員化に取り組む企業
- 非正規社員の待遇改善に取り組む企業
に、助成金を支給する制度です。したがって、ただ派遣社員を受け入れるだけでは助成金を受け取れません。
- 非正規社員を受け入れて正社員として雇用する
- 非正規社員の基本給を増額する
- 賞与や退職金制度を導入する
- 正社員と同じ賃金ルールを適用する
など、非正規社員の待遇改善に取り組む必要があるのです。
キャリアアップ助成金を活用するメリット
キャリアアップ助成金を活用すると、企業は以下のようなメリットを受けられます。
人材採用に関する費用の補助が受けられる
人材の採用には、下記のようなさまざまな費用が必要です。
- 人事担当者や面接担当者の人件費
- 選考時に応募者や面接者に支給する交通費
- 求人広告費
- 採用ツール(パンフレットやサイト)の制作費
キャリアアップ助成金によって、これらのコストをまかなえます。
優秀な人材を採用できる
前述のとおり、キャリアアップ助成金を受給するには「派遣社員を正社員化前提で雇用する」「待遇を改善する」などが必要です。こうしたプロセスを経て派遣社員でも高待遇で安定して働ける職場をつくれば、優秀な人材も集まりやすくなるでしょう。また派遣社員を正社員にする場合、派遣として働いてもらっている期間中にその人のスキルや人となりを見極められます。それに合わせて適正に配置もできるでしょう。
自社のイメージアップにつながる
昨今、正規社員と非正規社員の不条理な待遇格差が問題視されています。コロナ禍では、派遣社員の雇い止めも大きな問題となりました。昨今、改善に取り組んでいる企業も増えてきています。とはいえまだ、派遣社員も含めた非正規社員は不安定な働き方であるといわざるを得ない状況です。他社に先駆けて非正規社員の労働環境を整備すれば、企業のイメージアップにつながるでしょう。
キャリアアップ助成金のコース6つと受給額
キャリアアップ助成金には下記のような6つのコースがあります。それぞれの概要や受給額を見ていきましょう。なお、()内は大企業の場合の支給額となります。
- 正社員化コース
- 障害者正社員化コース
- 賃金規定等改定コース
- 賃金規定等共有化コース
- 賞与・退職金制度導入コース
- 短時間労働者労働時間延長コース
正社員化コース
非正規社員を正社員(短時間正社員・勤務地限定正社員・職務限定正社員を含む)に転換した際に支給される助成金のこと。なお「正社員になったあと」「正社員になる前」それぞれ6か月の賃金を比べて、3%以上増額していなくてはなりません。助成額は下記のとおりです。
- 有期雇用から正社員化した場合は1人あたり57万円(42.75万円)
- 無期雇用から正社員化した場合は28.5万円(21.375万円)
さらに非正規社員を派遣先で正規社員として直接雇用した場合、1人あたり28.5万円(大企業も同じ金額)加算されます。
障害者正社員化コース
障害がある非正規社員を正社員化した際に支給される助成金のこと。助成額は下記のとおりです。
- 有期雇用から正社員化した場合は1人あたり90万円(67.5万円)
- 有期雇用から無期雇用に転換した場合は45万円(33万円)
- 無期雇用から正社員化した場合は45万円(33万円)
また非正規社員を派遣先で正規雇用労働者として直接雇用した場合、1人あたり28.5万円加算されます。
賃金規定等改定コース
賃金規定で非正規社員の基本給を3%増額し、その規定を適用した際に支給される助成金のこと。助成額は下記のとおりです。
- 3%以上5%未満の範囲で増額した場合:1人あたり5万円(3.3万円)
- 5%以上増額した場合:6.5万円(4.3万円)
なお単純比較法や分類法、要素比較法や要素別点数法といった「職務評価」の手法の活用によって増額した場合、さらに1事業所あたり20万円(15万円)が支給されます。
職務評価の手法について詳しく知りたい方は、厚生労働省『多様な働き方の実現応援サイト』をご覧ください。
参考:多様な働き方の実現応援サイト|厚生労働省
賃金規定等共有化コース
非正規社員正規社員が同一になるような賃金規定等を新たに規定し、かつ適用した際に支給される助成金のこと。助成額は60万円(45万円)です。
賞与・退職金制度導入コース
非正規社員に賞与や退職金を支給する制度を導入し、実際に支給もしくは助成額は1事業所あたり40万円(30万円)です。賞与と退職金を同時に導入した場合、1事業所あたり積み立てを実施した際に支給される助成金のこと。16.8万円(12.6万円)が加算されます。
短時間労働者労働時間延長コース
非正規社員の所定労働時間を3時間以上延長し、かつ社会保険を適用した際に支給される助成金のこと。助成額は1人あたり23.7万円(17.8万円)です。また3時間未満であっても、下記のように助成金が支給される場合もあります。
- 1~2時間延長かつ10%以上昇給した場合は5.8万円(4.3万円)
- 2~3時間延長かつ6%以上昇給した場合は11.7万円(8.8万円)
キャリアアップ助成金の要件とは?
以下の要件にすべて該当する事業主はキャリアアップ助成金を受けられます。
1.雇用保険適用事業所の事業主
2.雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を置いている事業主
※キャリアアップ管理者は、複数の事業所および労働者代表との兼任はできません。3.雇用保険適用事業所ごとに、対象労働者に係るキャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けた事業主
4.実施するコースの対象労働者の労働条件、勤務状況および賃金の支払い状況等を明らかにする書類を整備し、賃金の算出方法を明らかにすることができる事業主
5.キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだ事業主
引用:キャリアアップ助成金のご案内(令和5年度版)|厚生労働省
なお事業主には、企業のほか公益法人や特定非営利活動法人(NPO法人)、医療法人や社会福祉法人なども含まれます。
ただし、以下のいずれかに該当する事業主はキャリアアップ助成金制度の対象外となるのでご注意ください。
1.支給申請した年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納入していない事業主
2.支給申請日の前日から過去1年間に、労働関係法令の違反を行った事業主
3.性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業またはこれらの営業の一部を受託する営業を行う事業主
4.暴力団と関わりのある事業主
5.暴力主義的破壊活動を行った、または行う恐れがある団体等に属している事業主
6.支給申請日、または支給決定日の時点で倒産している事業主
7.支給決定時に、雇用保険適用事業所の事業主でない※事業主
引用:キャリアアップ助成金のご案内(令和5年度版)|厚生労働省
キャリアアップ助成金の支給額は事業主の規模によって異なり、中小企業事業主は大企業と比べて多くの額を受給できます。中小企業事業主とは、以下のような事業主のことです。
- 小売業・飲食業…資本金の額・出資金の額が5,000万円以下または常時雇用する労働者が50名以下
- サービス業…資本金の額・出資金の額が5,000万円以下または常時雇用する労働者が100名以下
- 卸売業…資本金の額・出資金の額が1億円以下または常時雇用する労働者が100名以下
- その他の業種…資本金の額・出資金の額が3億円以下または常時雇用する労働者が300名以下
キャリアアップ助成金申請までの流れ
キャリアアップ助成金を利用する場合、まずはキャリアアップ計画の作成・提出を行わなければなりません。その際、労働局やハローワークで作成の援助や認定を受けられます。その後、コースによって以下のように流れが変わるのです。
正社員化支援(正社員化コース、障害者正社員化コース)における流れ
正社員化支援(正社員化コース、障害者正社員化コース)における流れは、下記のとおりです。
- 就業規則等の見直し・改定(正社員への転換に関する規定の追加など)
- 就業規則等にもとづいて非正規社員を正社員にする
- 正社員化したあと、6か月雇用して賃金を支払う
- 支給申請を行う(期限は、正社員化後6か月の賃金を支払った日の翌日から起算して2か月以内)
- 支給審査・支給決定
処遇改善支援に関するコースの流れ
処遇改善支援に関するコース(賃金規定等共有化コース、賞与・退職金制度導入コース、短時間労働者労働時間延長コース)の場合、以下のような流れです。
- 取り組みの実施(就業規則等の見直し・改定など)
- 取り組み後6か月の賃金を支払う
- 支給申請(期限は取り組み後6か月の賃金を支払った日の翌日から起算して2か月以内)
- 支給審査・支給決定
キャリアアップ計画の作成や就業規則の改定などに関しては、労働局やハローワークのサポートを受けられますので、困ったときは相談してみましょう。
まとめ
キャリアアップ助成金を活用すれば、
- 人材採用にかかるコスト負担を抑えられる
- 優秀な人材の確保につながる
- 企業イメージがアップする
など、さまざまなメリットを得られます。また働きやすい職場づくりは、派遣社員を含めた社員と企業、双方にプラスに働くはずです。
さらに昨今「人的資本経営」が注目されています。人材に投じる資金を「コスト」ではなく「投資」ととらえ、教育や環境整備などを通じて人材が持っているスキルを伸ばして、自社の利益につなげるという考え方です。キャリアアップ助成金は人材への投資にも大いに役立つ制度といえます。派遣社員の受け入れを検討されているのであれば、キャリアアップ助成金の利用も視野に入れてみてはいかがでしょうか?
制度の詳細については厚生労働省のホームページをご覧ください。
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