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派遣法 2022年06月03日
キーワードは“働き方改革”!2020年施行の「派遣法改正」を解説
これまでも時代の流れに応じて改正が行われてきた派遣法ですが、ワーク・ライフ・バランスの提唱や、働き方改革の流れを大きく受け、2020年以降も重要な法改正が行われています。
特に2020年の法改正で大々的に打ち出された「同一労働同一賃金」については、派遣元企業が腰を据えてかからなければならない対応内容が多々みられます。
今回はこの「同一労働同一賃金」をはじめ、2020年以降の改正派遣法の内容を紐解き、実際の対応内容やポイントとあわせて解説をしていきましょう。
派遣法とは?
派遣法に対応した教育環境を整えましょう
派遣法は、正規雇用の労働者と比較すると待遇に差が生じやすく、特殊な雇用形態ゆえに雇止めや派遣切りなどのトラブルが絶えない派遣労働者を守るための法律です。
派遣事業が適正に実施され、派遣労働者が雇用機会や福祉を確保され、心置きなく働くことができるように制定されました。
2020年以降のキーワードは「働き方改革」
2020年代の派遣法改正の経緯には、その前年に打ち出された「働き方改革」の影響を多大に受けた内容であるといえるでしょう。
働き方改革とは、労働者がそれぞれ抱えている状況に応じて、多様性・柔軟性のある働き方を選ぶことができる社会づくりを目指した施策です。
特に中小企業に対しては、より働きやすい職場環境づくりや経営者、社員の意識改革が生産性につながるものとして、働き方改革の必要性が提言されています。
このような経緯を経て2020年に行われた派遣法の法改正のうち、もっとも注目すべき内容は「同一労働同一賃金」を実現するための施策になります。
同一労働同一賃金とは、雇用形態の異なる労働者が同じ会社で同じ仕事を行う際には、待遇差の格差を設けてはならず、公正な待遇を確約しなければならない、という考え方です。
働き方改革の流れを受け、雇用形態は多様化し、労働者は自身の生活スタイルに合わせた働き方を選択する時代になりました。
そこで、フルタイム勤務の正規雇用者とパート・アルバイトなどの非正規雇用者が雇用形態を理由に不平等な扱いを受けないよう、同一労働同一賃金の考え方が改めて見直されるようになったというわけです。
しかし、派遣労働者の場合は若干状況が異なります。派遣労働者は、派遣元企業と契約を交わした上で、さまざまな企業へ派遣されます。
同一労働同一賃金の考え方にのっとる場合、派遣労働者の賃金等は、派遣先企業で同一労働を行う社員と統一する必要があることから、同じ派遣元企業と契約をする派遣労働者であっても、派遣された企業によって待遇が異なるという事態が生じます。
このような事態に対応するため、2020年の改正派遣法では、派遣元に対して次の3点が求められる運びとなりました。
2020年度の改正内容
(1)待遇格差をなくすための規定整備
派遣元企業は公平性を確保するため下記のいずれかの方式を選択した上で、派遣労働者の待遇を決定しなければなりません。
①派遣先均等・均衡方式
派遣先企業で働く無期雇用フルタイム社員と同様の待遇を確保する方式です。具体的には、職務内容や配置転換などの待遇での差別が禁止されています。
②労使協定方式
派遣元企業内で一定要件を満たす待遇を確約する労使協定を交わし、協定内容に沿った形で待遇を確保する方式です。派遣先企業は賃金面などの待遇情報を派遣元企業へ知らせる必要はありませんが、教育訓練や福利厚生に関する情報の提供は必要になりますので、派遣契約の際には注意しましょう。
(2)派遣労働者の待遇にまつわる説明義務の強化
派遣元企業が派遣労働者を雇い入れる際には、昇給や退職手当、賞与、労使協定方式が適用されるかどうか、苦情処理対応の詳細を必ず事前に明示し、説明をしなければなりません。
特に賃金面の待遇については、前述①の派遣先均等・均衡方式を取っている場合は派遣先の他労働者と比較して待遇に差があるか否かとその理由、待遇を定める基準を派遣労働者へ説明する必要があります。
一方、前述②の労使協定方式を取っている場合は待遇が労使協定に基づいて定められているか、派遣元企業で働く他の労働者と差別なく決定されているかについて説明をする必要があります。
(3)裁判外紛争解決手続(行政ADR)の規定の整備
派遣労働者が派遣元企業や派遣先企業との間でトラブルに発展した場合は、行政による助言・指導・勧告を受けることや、紛争調整委員会を介した調停の実施を求めることができるようになりました。
2021年度の改正内容
2020年の法改正からわずか1年後、派遣法はさらに改正が行われています。
前回の改正内容に加え、派遣労働者のキャリアアップや雇用安定を強化するため、派遣元企業に対して次の内容が規定されました。
なお、以下(1)~(3)は2021年の1月に、(4)~(5)は同年4月に施行されています。
(1)派遣労働者に対する雇入れ時の説明事項
派遣労働者を雇い入れる際には、キャリアアップ措置の説明や、教育訓練の内容を説明しなければなりません。
(2)日雇派遣労働者への解除等の措置
日雇派遣労働者が働く予定であった派遣契約が解除になり働けなくなった際には、その日雇派遣労働者に対して別の仕事を与える方法や、休業手当などを支払う方法で労働の埋め合わせを行う必要があります。
(3)労働者派遣契約の電磁的記録による作成
改正前までは、労働者派遣契約を締結する場合は書面でのやりとりが義務づけられており、書面の記載や押印、当事者同士での郵送のやりとりに時間がかかるという問題がありました。
そこで、法改正により電磁的記録、つまり電子上での契約が認められることになり、契約の手続きが効率化される運びとなりました。
(4)雇用安定措置についての派遣労働者の希望聴取
雇用安定措置とは、派遣契約期間終了後に派遣労働者が安心して働けるような環境づくりのための措置をいい、派遣先企業への直接雇用や新たな派遣先企業での就労、派遣元企業での無期雇用契約等が挙げられます。
これらの選択肢のうち、どの働き方を希望するのかを、派遣元企業はあらかじめ派遣労働者に確認し、派遣元管理台帳へ記載する必要があります。
(5)ネット上におけるマージン率等の情報の提供
派遣元企業がインターネット上で公表しなければならない派遣労働者の待遇などの項目に、新たにマージン率が加わりました。
提供する必要がある内容としては、事業所ごとの派遣労働者数や派遣先企業の数、マージン率、教育訓練の内容、労使協定の有無などが挙げられます。
なお、情報提供の方法としては、厚生労働省が運営する人材サービス総合サイトでの情報提供も認められています。
派遣元企業が気を付けるべきポイントは?
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ここまでの項目では、2020年以降の度重なる派遣法改正内容について述べてきましたが、ここからは、これらの改正内容を遵守するために、派遣元企業が行うべき対応について解説をしていきます。
まず覚えておくべき点として、派遣元企業は主に2種類の法律内容に気をつける必要があります。
一つは、今回解説をしている、派遣労働に関するルールが定められた「派遣法」です。通常の雇用形態とは異なる特殊な形態で、派遣元企業・派遣先企業・派遣労働者の三者それぞれが、適切に派遣労働事業が実施されるようにするために守るべき内容が定められています。
もう一つは、労働基準法です。派遣労働者の労務管理を適切に実施できるよう、雇用者が守らなければならない最低限度となるルールが定められています。
派遣元企業がさらに注意すべき点は、派遣先企業との連携です。最初に、派遣先責任者や実際に就労する派遣労働者に仕事上の指示を行う者を明らかにしてもらい、不明点があった際の体制を整えます。
さらに、派遣労働者が困った時に相談できる苦情処理受付担当も設置してもらい、不都合が生じた場合はすぐに対応できるようにする必要もあります。
また、派遣先企業に義務付けられている派遣労働者の勤怠管理内容などは、あらかじめフォーマットを決めておき、オンライン上ですぐに確認できるように情報共有体制を整えておくことが有効です。
加えて、派遣労働者の身を守るための安全衛生管理は、派遣元企業・派遣先企業が協力し合いながら実施しなければならないため、特に安全面に気をつけなければならない現場での就労については、派遣先企業からの報告がすぐに確認できるよう、連携の取り方をあらかじめ相談しておく必要があります。
安全面の他にも、派遣労働者が能力を最大限に発揮して派遣先企業で活躍できるよう、教育訓練も連携して行うことが求められています。
一般的には、基本的な教育訓練を派遣元企業で行い、実際の業務遂行内容についての教育訓練を派遣先企業で行う方法を取ります。
派遣元企業・派遣先企業がともに訓練内容を共有し合い、より適した訓練が実施できるようブラッシュアップしていく必要もあります。
派遣社員にも、正当な待遇が求められる
派遣法に対応した教育環境を整えましょう
働き方改革が大きく提唱されるようになった昨今では、派遣労働者に対しても他の正規社員と同様に、働いた分だけ正当に評価されるような待遇が求められるようになった点を覚えておきましょう。
まずは、派遣労働者の待遇の現状を洗い出した上で、派遣先企業と連携しながら詳細を検討していく必要があります。
厚生労働省のホームページでは、同種の業務に従事する一般的な労働者の賃金水準にまつわる内容が詳細にわたり記載されていますので、参考にしながら検討を進める方法も有効です。
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