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教育 派遣法 2024年05月25日

派遣社員の教育訓練・研修はなぜ必要?キャリアアップ措置について解説

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2015年9月の労働者派遣法の改正により、派遣元・派遣先のいずれにおいても派遣社員のキャリアアップを図ることが義務づけられました。さらにその後2021年1月の改正では、派遣社員に向けた教育計画の説明義務が課されました。近年、具体的に派遣社員の教育のあり方について見直しをすることが迫られています。

 

今回は、派遣社員に対して「どのような教育訓練を行う必要があるか」「教育訓練の種類」について確認していきます。

なぜ派遣社員の教育が必要か?

 

労働者派遣法は派遣社員の就業環境や雇用の安定を図ることなどを目的とした規定で、これまでにも「派遣業種の拡大(製造業など)」や「3年ルール(同一の派遣先に3年を超えて派遣される場合、その派遣社員を直接雇用することを義務付けるルール)」など、派遣社員の労働環境などの整備が進められました。

2015年9月改正から見た教育の必要性

2015年9月に行われた労働者派遣法の改正によって、派遣社員向けに「キャリアアップ措置」を行うよう、派遣元事業主・派遣先に義務付けられました。

 

派遣社員のキャリアアップの形成という観点から、大きな改正が行われたものといえます。

2021年1月改正から見た教育の必要性

2021年1月の改正により、キャリアアップ計画について派遣社員に対して説明することが義務付けられました。

 

これに伴い、派遣社員は入職時に自身のキャリア形成の方向性を確認できるようになったほか、キャリア形成についての悩みや疑問を解決できることに繋がり、自身の今後の展望を持てるようになりました。

 

この改正は、2015年9月改正の内容からさらに踏み込んで、派遣社員のキャリアアップ計画の在り方、派遣社員の教育をどのように行う必要があるかという部分が、以前と比べて、重要な意味を持つようになったため行われました。

2015年9月の労働者派遣法の改正について

2015年9月に施行された改正の趣旨は「派遣就業が臨時的・一時的なものであることを前提とし、より一層の派遣社員の雇用の安定、保護等を図っていくこと」とされています。

 

具体的に、派遣元事業主と派遣先企業に求められるキャリアアップ措置について触れていきます。

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1.派遣元事業主が行わなければならないキャリアアップ措置

 

(ア)段階的かつ体系的な教育訓練の実施

 

入社した派遣社員に行う教育訓練の内容については、入社してからの期間や派遣されている業種などに応じて必要な知識や技術などの教育を行うこと

 

具体的な教育訓練計画については、2021年以降は説明義務として定められています。キャリアアップ計画をどのように行い、どの段階のレベルを目指していくのかを明確にすることが重要です。

 

 

(イ)キャリアコンサルティングの相談窓口の設置

 

派遣労働者が将来的なキャリア展望をどのように進めていきたいかなどについて、キャリアコンサルタントや産業カウンセラーなどに相談できる窓口を設置することですので、相談窓口の設置は必須です。

 

なお、相談窓口に入られる担当者はキャリアコンサルタントなどの専門資格を保有している方であることが望ましいです。

 

 

(ウ)「キャリア形成を念頭に置いた派遣先の提供を行う」ための手続きに関する規定

 

派遣先においても、派遣社員のキャリア形成のためのOJTやOff-JTにつながる業務を提供するよう、派遣元企業が規定すること

 

 

(エ)教育訓練の時期・頻度・時間数等

 

派遣社員に対する教育訓練の内容や実施時期、時間数などを明確に規定すること

2.派遣先が行わなければならないキャリアアップ措置

派遣社員に対する派遣先が行うキャリアアップ支援として、以下のようなものがあります。

 

(ア)雇い入れ努力義務

 

派遣社員を継続して1年以上受け入れており、派遣元事業主から直接雇用する依頼があり、派遣期間終了後に正式に雇用する際は、遅滞なく雇い入れを行うように努力すること

 

 

(イ)正社員募集情報の提供義務

 

派遣先の同一の事業所で同一の派遣社員を継続して1年以上受け入れており、その事業所で働く正社員を募集する場合に、募集する内容や労働条件などを周知する義務

 

 

(ウ)労働者の募集情報の提供義務

 

派遣先の同一の組織単位の業務に継続して3年以上受け入れる派遣社員に対して、派遣元事業主から、直接雇用するよう依頼があり、労働者の募集をする場合において、労働者の募集情報を周知する義務

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2021年1月の労働者派遣法の改正について

 

2021年1月に行われた労働者派遣法の改正では、派遣社員に対して教育訓練計画の説明が義務化されました。

 

この改正によりキャリアアップの具体的な計画について派遣社員への説明が義務化されたため、派遣社員への教育の重要性がさらに高まりました。

キャリアアップ計画説明の義務化の趣旨

派遣社員がどのようにキャリアを形成していくかについては、派遣社員本人の意向をしっかりとヒアリングをしたうえで決定するために、派遣元で計画している派遣社員のキャリアアップ計画について派遣社員に対して説明をすることが義務づけられました。

 

これによって、具体的なキャリア形成について派遣元事業主と派遣先だけで決められていたキャリア形成の流れを、派遣社員本人へ説明をすることで、派遣社員と派遣元事業主、派遣先との間でのミスマッチを未然に防ぐことにもつながります。

教育訓練の内容

 

派遣社員に対する教育訓練は、一般的な会社に入社した正社員に対する教育訓練の内容と差はほぼありません。

 

派遣社員という雇用形態が正社員とは全く異なる性質のもの(正社員は「雇用される先と労働力の提供先が変わらない」が、派遣社員は「実際に労働力を提供する先が変化する」)であるため、教育訓練の内容や必要性についても異なる見識を持つことがあると考えられます。

1.訓練が必要な対象者

教育訓練が必要となる対象者は「すべての派遣社員」となります。ただし、過去に同様の教育訓練を受けたことがある人や、派遣される業務に関する資格をすでに有しているなど、明らかに十分な能力がある人は受講済みとして取り扱うことができます。

2.具体的な訓練時間

教育訓練の具体的な時間数や頻度などについては、次の3つのポイントを押さえておく必要があります。

 

(ア)派遣社員全員に対して入職者による教育訓練が必要

 

教育訓練は、少なくとも最初の3年間については、毎年1回以上の機会の提供が必要とされています。

また、キャリアアップ計画の節目となる段階などについて、一定の期間ごとにキャリアパスに応じた研修を行う必要もあります。

 

(イ)最初の3年間については、毎年概ね8時間以上の教育訓練の機会の提供が必要

 

フルタイムで1年以上の雇用が見込まれる派遣社員がいる場合は、その派遣社員1人当たりで毎年少なくとも8時間以上の教育訓練を行う必要があります。

 

(ウ)派遣元事業主は教育訓練を適切に受講できるように、就業時間等に配慮が必要

 

派遣元事業主は派遣先に対して、派遣社員が教育訓練を受けられるように双方で取り決めを行っておくことが望ましいです。

3.教育訓練にあたり具体的に用意するべきもの

派遣元が派遣社員に対する教育訓練にあたって具体的に用意するべきものは以下の3つになります。

 

・教育訓練計画のカリキュラム

・教育訓練で使用する教材

・派遣社員自身が作成するキャリアアップシート 等

教育訓練の実施方法について

Blue flash / PIXTA(ピクスタ)

 

実際に教育訓練を行う方法として、「研修」、「OJT」、「off-JT」、「e-ラーニング」などがあります。これらの方法は、企業に正社員として就職した場合とほぼ同じものとなります。

1.研修

集合形式で基本的な業務についての知識や技術などを座学形式で学ぶ教育訓練形式です。基本的に、派遣元事業主が行うことになりますが、近年の状況を鑑みて、オンラインで開催されることも増えています。

2.OJT

OJTとは、「On the Job Training」の略語で、現場の業務体験を通じて、必要な知識や経験などを積み上げていくことで、キャリアの形成を図っていく教育訓練の方法です。現場作業を通して訓練を行うことになるため、製造業などで行われることが多い教育訓練の方法といえます。

3.Off-JT

「OFF-JT」とは、「OFF the Job Training」の略語で、現場での業務ではなく、現場から離れてセミナーや研修などを行うことで、その業務を行うために必要な知識や技術の習得を目指すための教育訓練です。

 

セミナーや研修の形で実施されることが多く、人材育成を担当する部署が担当したり、外部の講師や団体を招いたりして実施します。

 

今後の業務で求められる基礎をしっかり教えることが重視されているため、講師が講義を行う座学のスタイルが主流ですが、グループワークなどの作業形式を取り入れるケースも増えています。

4.eラーニング

教育訓練の内容をインターネット上で行う形式の教育訓練です。

 

eラーニングの特徴として、教材をインターネット上からダウンロードして準備を事前に行う必要があり、いつでも好きな時間帯に教育訓練を受講できることが挙げられます。

 

最近の派遣社員に対する教育訓練の方法として、選ばれることが増えてきています。

教育訓練を実施する際の注意点

教育訓練を実施する際には、気をつけるべき点があります。ここでは、2つの注意点について解説します。

改正派遣労働法の目的に沿った内容にする

教育訓練は、改正派遣労働法の目的に沿った内容にする必要があります。派遣社員のキャリア教育・業務に必要なスキルを習得するためのカリキュラムを実施しましょう。不適切な内容の場合、教育訓練として見なされない可能性があるため、注意が必要です。

派遣先管理台帳への記載を忘れないようにする

教育訓練を実施する際には、派遣先管理台帳への記載を忘れないようにしましょう。派遣先管理台帳は、派遣会社に派遣社員の勤務状況を報告するための書類です。具体的には、教育訓練の日時や内容などを実施した証明として報告します。

まとめ

派遣元事業主は、2015年の労働者派遣法の改正によって、派遣社員を派遣先に派遣するにあたって、最低限必要な知識や経験を積ませる機会の提供を義務づけられています。

 

また、2021年の改正によって教育訓練計画の説明の義務化が追加されたことで、派遣社員のキャリア形成を派遣元・派遣先ともにしっかりとサポートすることが必要とされています。

 

こうした背景からも分かるように、派遣社員の教育は、派遣社員のキャリア形成をどのように進めていくかを決定するうえで大きな要素となるでしょう。

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この記事の著者

岡崎 壮史

社会保険労務士・1級FP技能士・CFP認定者 大学卒業後、外資系生命保険会社の営業、資格の専門学校の簿記・FPの講師、不動産会社の経営企画を経て現在に至る。 現在は、助成金活用コンサルを中心に、助成金の申請代行、活用相談や働き方に関連するセミナーなどを通じて働き方改革の推進のサポートを行っている。

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