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パワハラ防止法 2022年07月29日

中小企業も努力義務から義務化へ「パワハラ防止法」ってどんな法律?

中小企業も努力義務から義務化へ「パワハラ防止法」ってどんな法律?

パワハラ防止法対策に必要なことが1冊に/

 

不透明な経済情勢や新型コロナウイルス感染症蔓延の影響もあって、企業も社員も疲弊し、ストレスを抱える人が少なくありません。このような中、パワハラの発生も懸念されており、各企業へは早急な防止策が求められています。

 

今回は、新たに中小企業も義務化がされたパワハラ防止法の内容を通して、パワハラを防止するためにはどのような対応をすれば良いかを紐解いていきましょう。

パワハラの定義とは?

 

 

職場内で発生するパワハラ(パワーハラスメント)は、国により次の3種類の内容“すべて”を満たす行為であると定義されています。

1.優越関係をもとにした言動

職場での地位が上の者が下の者に行う言動や、同僚であっても立場に差があり、下とみられている者に行う言動、複数人で一人の社員に対して行う言動など、仕事をするにあたり避けることができない上下関係や圧力などがもとになって起こる行為を指します。

 

なお、前述の「圧力」がもとになった行為というと、立場が上の者から下の者への圧力を想像しがちですが、たとえば立場が下の者同士が集団となり、上司に向けて嫌がらせ行為をしたり指示を無視したりする行為についてもパワハラの一種とみなされる点に注意しましょう。

2.業務上で不必要・また相当な範囲を超えた言動

社会的に見て明らかに不必要な言動や、業務内容から大きく逸れた言動の回数や内容が度を超えていると判断される場合を指します。たとえば、仕事とは全く関係のない人格否定や悪口などがこれに該当します。

 

なお、業務上必要な行為であるか否かについては、言動が行われた目的や被行為者である社員に問題行為があったかどうか、業種や仕事の内容、言動の頻度、被行為者である社員の心身状態、行為者と被行為者の関係、過去の判例などから総合的に判断されます。

3.社員の職場環境に害をなす言動

社員の心身を傷つける暴力や嫌味の応酬、叱責、無視などの言動を繰り返すことで、被行為者である社員が怪我をする行為や、精神に支障をきたす行為のことです。

 

1~3のいずれも、常識的に考えれば取るべきではない行為であることがお分かりいただけたかと思います。

 

なお、ここでいう職場とは、通常所属しているオフィス内にかかわらず、出張先や移動途中の公共交通機関内や車内、顧客との接待の場などの場所であっても、会社のために仕事をしている状況であるとみなされれば「職場」に該当することになります。

 

また、パワハラと認定される社員の雇用形態に基準はなく、正社員の他にも契約社員、パート・アルバイト、嘱託社員などすべての者が該当します。もちろん派遣社員に対する行為もパワハラ認定の対象となることから、派遣元・派遣先の双方の企業に対してパワハラ防止に向けた対応が求められます。

パワハラの具体例

freeangle / PIXTA(ピクスタ)

 

パワハラ防止法対策に必要なことが1冊に/

 

パワハラの定義を理解したところで、次はパワハラと認定される恐れのある具体例について、内容別に見ていきましょう。

1.身体への攻撃

殴ったり叩いたり蹴ったりするような暴行や、相手に物品を投げつけ、相手を肉体的に傷つける行為などがこれに該当します。一方、故意ではない接触などは該当しません。

2.精神的攻撃

言葉の暴力や、性的な言動、侮辱的な発言が該当します。

 

また、大勢の前で叱責を繰り返したり、一斉メール配信の際に特定の相手への攻撃内容を記載したりする行為も精神的攻撃に該当します。

 

一方、被行為者側に社内ルールを守らない等の問題行為があり、常識的に問題のない程度で叱責を行う場合などは該当しません。

3.人間関係の切り離し

正当な理由なく仕事や研修への参加権利を与えなかったり、別の部屋へ追いやったりするような、いわゆる仲間外れのような行為をいいます。集団で無視をする行為もこれに当たります。

 

一方、懲戒処分による別室隔離などは該当しません。

4.過大な要求

どう考えても遂行が難しい量の仕事を与える行為や、身体に悪影響を及ぼすような環境下で長時間仕事をさせる行為、新入社員に社内教育を行わないままハイレベルの仕事を押しつける行為、仕事とは直接関係のない雑用を無理強いする行為などが該当します。

 

一方、本人のレベルアップを見越して少し難解な仕事を与えたり、繁忙期に手分けして多くの業務をこなす行為はこれに該当しません。

5.過小な要求

リストラさながらの態度で管理職にわざと単純な作業をさせることや、特定の相手に嫌がらせ行為として仕事を与え続けないことが該当します。

 

一方、社員の能力にあわせて業務量を削減させる行為は該当しません。

6.プライバシーの侵害

プライベートな時間に業務とは関係のないメッセージを執拗に送り続けたり、相手の私物を撮影したりするような、プライバシーに無理やり立ち入る行為が該当します。また、相手のプライベートな情報を本人の了承を得ないまま公開することも、相手を傷つける行為としてパワハラに扱われます。

 

一方、人事労務作業に必要な社員の個人情報を入手する行為などはこれに該当しません。

パワハラ防止法とは?

パワハラ防止法対策に必要なことが1冊に/

 

ここまでパワハラの定義についてご説明しましたが、ここからはパワハラ防止法について解説していきます。パワハラ防止法とは、改正された「労働施策総合推進法」のことです。

 

この法律では、職場で起きるパワハラが増加傾向にあることや、それにより精神疾患を患う社員が増えていること、そして、全国の3割近い企業でパワハラに関する相談が発生していることなどを受け、職場で実施するパワハラ対策を法律的に整備し、企業規模に応じて段階的に適用していく旨が定められました。

 

具体的には、大企業に対しては2020年6月以降、中小企業に対しては2022年4月にパワハラ防止措置が義務づけられています。つまり、現在はすべての企業がパワハラ対策をしなければならないということです。

 

パワハラ防止法では、まず前項目で述べたように「パワハラとはどのような行為か」を定義づけし、その上でパワハラを防止するために会社が講じなければならない措置についての指針を発表しています。

守らないとどのような罰則があるのか

パワハラ防止法については、例えば労働基準法などとは異なり、明確な罰則規定は設けられていません。したがって、法律に従わずパワハラ防止対策を取らなかったとしても、国側としては懲役や罰金刑などの罰則を科すことはできません。

 

ただし、パワハラが発覚した場合や、適切な防止対策を取らなかったと判断される場合は、厚生労働省による勧告や内容公表などが行われる可能性があります。そして、企業名が公表されることは、企業のイメージダウンにつながり、レピュテーションリスクが高まってしまいます。

 

また、法令順守のためにも、社員に安心して働いてもらえるような職場環境づくりのためにも、パワハラ防止法の内容は遵守する必要があります。

パワハラを起こさないために企業がやらなければならないこと

 

パワハラを防止するために会社が行わなければならない対応は、主に次の通りです。

 

  1. 社員に向けて、パワハラの危険性やパワハラ行為の対象内容を明確にし、社内研修や掲示板での掲示、社内メール等で周知を行う
  2. パワハラ相談窓口や担当者を設置する
  3. パワハラ発生時の対応(被行為者への配慮措置・行為者への措置)を取る
  4. パワハラ相談窓口へ来られた相談者のプライバシー保護や、相談したことで、相談者にとって不利益な措置や対応が発生しないことを周知する

 

これらの措置は、当然ながら派遣元企業へも課せられるものです。特に派遣業務の場合、派遣社員はさまざまな派遣先で就労を行います。期間ごとに職場環境が変わることから、パワハラの被害に遭う可能性もそれだけ多くなります。

 

ただし、派遣社員が実際に就労しているのは派遣先企業となるため、パワハラ防止対策は派遣元企業・派遣先企業が協力して対応を取らなければならない点に注意が必要です。

 

例えば、派遣社員から派遣先でのパワハラ被害の報告があった場合は、派遣元企業はただちに派遣先企業に対して確認を取ります。具体的には、パワハラ発生までの経緯や状況、どのような言動があったのかを詳細に調べ、派遣先に再発防止のための働きかけを行います。

 

一方、派遣先の企業も、一般雇用の社員と同様に、派遣社員に対するパワハラが起こらないように対策を取る必要があります。派遣社員の所属先は派遣元企業ではあるものの、実際に就労をしているのは派遣先企業になるため、責務が課せられているということです。

 

なお、派遣元企業には、派遣社員から苦情を受けた際に「派遣元管理台帳」への記録が義務づけられています。パワハラ被害の報告を受けた場合についても、同様に派遣元管理台帳へ経緯の詳細を記しておきましょう。

 

また、派遣社員自身がパワハラの行為者とならないよう、派遣元企業は派遣社員に対して前述の1.の内容に相当する社内研修を行う必要があります。社内研修は、実地に加えe-ラーニングを活用したオンライン方式も認められていますので、状況に応じて最適な対応を取るようにしましょう。

パワハラ防止に取り組んだ事例

パワハラ防止法対策に必要なことが1冊に/

 

ここでは、パワハラを防止するための取り組みを行った企業の事例をいくつか紹介します。自社の参考にしてみて下さい。

1.オンライン研修を修了した人のみがネット利用できるシステムの構築

東京都のある建設業を営む企業では、ハラスメント防止のためにはコンプライアンスの遵守が必須であるという考えにより、年に4回実施されるe-ラーニングによるオンライン研修を受講し、修了をしなければ、仕事で使用する社内のデータベースが利用できないというシステムを設けました。

 

その他、コンプライアンスに関するマニュアル冊子の配布なども含め、社員全体でコンプライアンスへの理解を深め、社員同士が円滑にコミュニケーションを取れるような職場環境づくりに取り組んでいます。

2.社内アンケートの継続活用

兵庫県のある製造業を営む企業では、ハラスメントの防止対策としては、ハラスメントを発生させない「予防」が重要であるという考えから、実態調査のために10年前よりアンケート調査を開始しました。

 

アンケートの記名・無記名の判断は社員に委ねられており、選択式と記述式を取り入れながら実情が把握できるような内容にしています。また、個別での相談を希望するか否かの設問も盛り込み、社員一人ひとりの意見を大切にしている点に特徴があります。

 

アンケート結果は全社に向けて公表されるため、閲覧した社員はパワハラが疑われる行為の事例を生の声から仕入れることができ、パワハラ予防の体制がより強固になるという仕組みです。

 

参考:厚生労働省リーフレット 平成28年度 働きやすい職場環境形成事業「職場のパワーハラスメント対策 取組好事例集」

まとめ

パワハラの定義やパワハラ防止法の概要、実際に各企業で取るべきパワハラ防止対策についてお分かりいただけましたでしょうか。

 

特に派遣業については、雇用形態の多様化を受けて注目されている働き方ということもあり、さまざまな企業で活用されています。ですがそれと同時に、非正規雇用で比較的立場が弱い派遣社員へのパワハラが問題になってきています。まずは早急に社内で取るべきパワハラ防止対策の内容について検討してみるべきでしょう。

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この記事の著者

加藤 知美

エスプリーメ社労士事務所 社会保険労務士 加藤知美 愛知県社会保険労務士会所属。総合商社、会計事務所、社労士事務所の勤務経験を経て、2014年に個人事務所を設立。 総合商社時では秘書・経理・総務が一体化した管理部署で指揮を執り、人事部と連携した数々の社員面接にも同席。会計事務所、社労士事務所勤務では顧問先の労務管理に加えセミナー講師としても活動。 現在は文章能力を活かしたオリジナルの就業規則・広報誌作成事業の2本柱を掲げ、専門知識を分かりやすく伝えることをモットーに企業の支援に取り組んでいる。

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