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派遣法 2022年05月23日
【改正派遣法】よく聞く「3年ルール」ってどんな制度?別部署に異動すれば3年以上働けるって本当?
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派遣社員を受け入れる派遣先企業が注意しなければならない派遣法上のルールとして、いわゆる「3年ルール」というものがあります。
平成27年9月30日から施行されている改正派遣法により、派遣先企業が派遣社員を受け入れることができる期間を3年間とする、いわゆる「3年ルール」が始まっています。
「3年ルール」は、その期間の計算方法が複雑であったり、例外もあったりと複雑である一方で、派遣先企業がこれに違反して派遣社員を受け入れた場合には、労働契約申込みみなし制度により当該派遣労働者を直接雇用しなければならないこととなり、大きな影響を及ぼします。そんな「3年ルール」について詳しく説明します。
目次
そもそも「3年ルール」とは?その趣旨は?
「3年ルール」とは
一般に「3年ルール」と呼ばれているものの、これを派遣法に即して正確に表現すると、「3年の派遣可能期間」のことを指します(派遣法第40条の2第1項及び第2項)。
「派遣“可能”期間」と聞くと、派遣会社だけに課されている義務のように思われますが、派遣会社だけでなく(派遣法35条の2、35条の3)、派遣先企業にも受入れ禁止の義務が課されています。後で詳細を説明しますが、3年ルールは、大きく分けて①事業所単位(派遣法40条の2)、②個人単位(派遣法40条の3)の2パターンに分けられます。
趣旨は「常用代替の防止」と「キャリアアップ」
では、そもそもなぜ「3年ルール」のような期間制限が課されているのでしょうか。
3年ルールの制限の趣旨は、一般的には「常用代替の防止」という趣旨によるものであるとされています。
つまり、労働者を受け入れることができる期間を制限することで、派遣先企業の社員(一般的には「正社員」を想定)が、雇用が不安定な派遣社員に置き換えられることを防ぐという目的があります。
これに加えて、上記のとおり3年ルールには個人単位での期間制限も課されており、この観点からは、派遣労働者が特定の仕事で固定化されることは、キャリアアップ(ひいては待遇の向上)の観点から望ましくないこと、労働市場全体で派遣労働者の増大を防ぐという目的があります。
このような趣旨からすると、派遣会社や派遣先企業にとっては負担となるものではありますが、派遣社員にとってはメリットの大きいものと言えるでしょう。
3年ルールの対象は有期雇用の派遣労働者
3年ルールの制約は全ての労働者派遣にかかるわけではなく、以下の労働者派遣については、3年ルールの対象外となります(派遣法40条の2第1項ただし書き)。
(1) 無期雇用派遣労働者の労働者派遣
(2) 60歳以上の者の労働者派遣
(3) 有期プロジェクト業務にかかる労働者派遣
(4) 日数限定業務にかかる労働者派遣
(5) 産休取得等の代替としての労働者派遣
【関連記事】
「無期雇用派遣」とは|有期雇用との違いや派遣元・派遣先がとるべき対応などを紹介
3年ルールの期間計算方法
計算の開始は「対象となる派遣労働者の受入れ」から
3年ルールの計算は、期間制限の対象となる派遣労働者の受入れ日からとなります。そのため、先ほど述べた3年ルール対象外の派遣労働者を受け入れたとしても、3年ルールの計算はスタートしません。
クーリング期間
3年ルールは、「継続して」派遣労働者を受け入れる期間を制限するものです。したがって、対象となる派遣労働者の受入れの間に一定期間の空白期間があれば、「継続して」受け入れていることにはならず、改めて派遣労働者を受け入れることができます(クーリング期間)。
どの程度の空白期間があれば継続性が否定されるかについては、法令上の定めはありませんが、派遣先指針では、3か月を超えない場合には継続しているとみなすとしています。したがって、対象となる派遣労働者の受入れに3か月を超える空白期間があれば、3年ルールの違反とはなりません。
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「事業所単位」と「個人単位」の期間制限
3年ルールの期間制限には、大きく「事業所単位」と「個人単位」の2パターンの考え方があります。
事業所単位の期間制限
事業所単位での3年ルールの制限は、派遣労働者を受け入れる派遣先企業が、「特定の派遣労働者の誰か」ではなく、そもそも派遣労働者自体を受け入れることができる期間の制限です。
(1)受入れが制限されるのは「事業所その他派遣就業の場所」単位
3年ルールの制約が課されるのは、「事業所その他派遣就業の場所」の単位であり、同じ事業所等で派遣労働者を受け入れることができるのは原則として3年間ということになります(例外は、後述します)。
具体的には、他の事業所等からの独立性、経営の単位として人事、経理、指揮監督、労働の態様等における独立性、施設としての持続性等から判断され、例えば、工場、事務所、店舗等が一単位となります。
したがって、例えば同じ工場で3年間、派遣労働者を受け入れることは原則として禁止されるということになります。また、後述の個人単位の期間制限の場合と異なり、事業所が同じである限り、違う部署への異動をしても3年の期間制限がかかります。
【事業所単位の派遣可能期間のイメージ】
(2)事業所単位の期間制限は延長可能
事業所単位の派遣可能期間は原則として3年です。
もっとも、当該事業所の労働者の過半数で組織する労働組合(これがない場合には、過半数代表者)の意見聴取手続を経ることで、3年を上限として派遣可能期間を延長することができます。これは、同じ手続きを繰り返すことで、延長を繰り返すことも可能です。
上記の意見聴取手続は派遣可能開始期間満了の1か月前までに行う必要があります。
なお、ここで求められているのは、「意見を聴くこと」であり、過半数組合等の同意までは求められていません。ただし、当該過半数組合等が異議を述べたときは、延長の理由、延長の期間等を説明することとされています(派遣法40条の2第5項)。
(3)抵触日の通知
事業所単位での派遣可能期間は、違う派遣労働者を派遣する場合でも課されることとなりますが、派遣会社にとっては、これから労働者を派遣しようとする派遣先企業の事業所でいつから派遣可能期間の対象となる派遣労働者を受け入れているかを知ることができません。
そこで、派遣先企業は、労働者派遣契約を締結するにあたり、あらかじめ派遣会社に対して事業所単位の派遣可能期間に抵触することとなる最初の日を通知しなければならないとされています(派遣法26条第4項。「抵触日」といいます)。派遣会社は、この抵触日の通知を受けなければ労働者派遣契約を締結することはできません(派遣法26条第5項)。
上記(2)で延長した場合に、延長した結果として派遣可能期間に抵触することとなる最初の日を通知することとなります(派遣法40条の2第7項)。
【関連記事】
派遣の抵触日とは|押さえておくべきルールや注意点について解説
個人単位の派遣可能期間
上記は同じ事業所において、派遣労働者自体を受け入れることを制限するものですが、それとは別に、同じ特定の派遣労働者を「同一の組織単位」で3年間を超えて受け入れることも禁止されています。
ここでいう「同一の組織単位」は、「課」を想定されています。そのため、例えば総務課である派遣労働者を受け入れた場合、3年間しか総務課で受け入れることはできず、例えば同じ総務課内で違う職務に就く場合でも同じです。
他方で、上記の事業所単位での期間制限と異なり、3年が経過するところで、別の課(例えば営業課)で続けての受け入れが可能です。ただし、この場合、別途上記の事業所単位での派遣可能期間の制限がかかるため、上記の延長手続を経ておく必要があることに注意が必要です。
【個人単位の派遣可能期間のイメージ】
なお、個人単位での派遣可能期間については、事業所単位のような期間の延長は認められていないことには注意しましょう。
3年ルールの整理
3年ルールを整理すると、以下のようになります。
項目 | 事業所単位 | 個人単位 |
対象となる労働者派遣 | 以下を除く労働者派遣 (1)無期雇用派遣労働者の労働者派遣 (2)60歳以上の者の労働者派遣 (3)有期プロジェクト業務にかかる労働者派遣 (4)日数限定業務にかかる労働者派遣 (5)産休取得等の代替としての労働者派遣 |
|
クーリング期間 | 3か月 | |
期間制限の範囲 | 事業所その他派遣就業野場所 (工場、事務所、店舗等) |
組織単位(「課」を想定) |
延長の可否 | 意見聴取を経れば可能 | 不可 |
3年ルールに違反して派遣社員を受け入れてしまったら?
派遣会社が3年ルールを超えて派遣労働者を受け入れた場合、労働者契約申込みみなし制度の対象となります(40条の6第1項第2号、3号)。
したがって、派遣先企業は、その派遣労働者を派遣会社での労働条件と同じ内容で雇用する旨の申込みをしたこととみなされ、当該派遣労働者がそれに応じれば、当該派遣労働者をその内容で雇用しなければならないこととなります。
3年ルールは派遣労働者を受け入れ前から注意しておく
派遣法に定めるルールの多くは派遣会社を名宛人とするものですが、この3年ルールは、派遣会社だけでなく派遣先企業をも名宛人とするものでもあります。そして違反に対しては労働契約のみなし申込という強い制裁があります。これは派遣先から派遣労働者に対して、派遣元の労働条件と同じ労働条件で契約申込をしたとみなされる制度です。
派遣先企業は労働者派遣を受けようとする段階であらかじめ抵触日を通知する必要があるため、3年ルールは派遣労働者を受け入れる前から始まっていると認識し、適切に管理しましょう。
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